ホンダ、下請け部品会社の電気代上昇分を負担 取引先支援

直接部品を調達する一部の1次取引先の部品会社に伝えた。支払額は部品会社の国内売上高のうち、ホンダ向け割合と電気代上昇分を掛け合わせて算出する。部品会社は電気代の負担が重くなっているとして、対応をホンダに求めていた。

あるホンダの1次取引先は、23年3月期の国内生産に使った電気代は前の期の8割増の5億円になった。ホンダは増えた分の2億円余りを支払うと伝えたという。部品大手幹部は「ホンダがこうした取り組みをするのは初めて」と語る。

東京商工リサーチによると、ホンダの1次取引先は約1800社ある。ホンダは取引先の経営状況や取引条件をみながら、個別で電気代の負担を交渉する。

ホンダは電気代の負担額を明らかにしていないが、23年3月期の取引先支援や原材料高などのコスト上昇分は総額4300億円を見込む。

ロシアによるウクライナ侵攻などの影響で、電気代は高騰している。東京電力ホールディングスの電力小売り子会社は、4月から法人向け標準料金を1割引き上げるなど、さらなる負担増加が見込まれている。

ホンダは2月下旬に、直接取引する部品会社に対し、24年3月期は値下げ要請をしないことも伝えている。コスト負担の増加は一部を価格に転嫁する。3月末、主力車種の軽自動車「N-BOX」やミニバン「ステップワゴン」など3車種で最大2%値上げすると発表した。

トヨタ自動車も部品メーカーの支援に取り組む。同社は1次取引先にエネルギー費用の増加分を支援する方針を示している。部品メーカーの生産に必要なエネルギーコストの負担増も23年3月期決算の通期予想にすでに織り込んでいる。原材料高による費用増を1兆6000億円と見込む。

人手不足や物価高に対応して中小の部品メーカーも賃金を上げている。機械、金属などの中小製造業の労働組合を中心に構成するJAMによると、23年の春季労使交渉で組合員300人未満の労組(346組合)のベースアップ(ベア)に相当する賃金改善額は5199円となり、前年同時期の約2.6倍となった。

原材料高や電気代の上昇などの負担増が続くうえ、物価高に対応した賃上げ原資の確保も中小部品メーカーには引き続き課題となる。車載半導体不足で低調だった自動車生産は回復傾向にある。供給網を中長期で維持・安定させるには、一時的なコスト負担にとどまらず、取引先と一体となった生産性の改善も必要となる。(日経電子版 参照)

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