特定技能の長期就労拡大、企業は待遇改善へ意欲

外国人の在留資格「特定技能」のうち何度も資格を更新できる「2号」の対象業界が拡大される。新型コロナウイルス禍からの経済正常化もあって人手不足感が増すなか、外国人労働者に頼る外食や食品製造、宿泊といった企業からは待遇改善なども見据えた前向きな見方が多く出ている。

ファミレスチェーン「ロイヤルホスト」を展開するロイヤルホールディングスは2023年から特定技能「1号」での外国人の採用を始める。今までは定期採用していなかったが年10人を採用し、5年で50人を確保する計画だ。長期就労が見込めることとなり、「日本人の待遇改善に合わせて特定技能外国人の待遇改善も進めていく」とする。

すかいらーくホールディングスも今年、技能実習を終えたベトナム人をセントラルキッチンの人事担当の正社員として採用した。技能実習生が特定技能で継続して働いてもらえるよう、外国人の採用やトレーニング、マニュアル作りや研修などの業務を担う。

外食分野を中心に特定技能人材を企業に紹介する明光キャリアパートナーズ(東京・千代田)には特定技能2号の拡大を見越した企業からの問い合わせが増えている。小西悠太社長は「インドネシアやミャンマーなどには日本で働きたい人材がまだまだ多い。さらに受け入れが拡大するだろう」と期待を込める。

外国人の長期就業が可能となった飲食料品製造や宿泊などの企業も長期就労外国人の受け入れは前向きだ。長期就労に向けた制度整備なども進みそうだ。

業務用野菜の加工を手掛けるデリカフーズホールディングスは「家族を呼べるようになると日本で働く外国人が安心して働けるので歓迎したい」とする。技能実習や特定技能で約500人を雇用しており、グループ全体の3分の1を外国人材が占める。長期就労に向け業務の習熟度向上などに伴う待遇改善を進める方針だ。2号の資格を取得した場合の手当支給などを検討する。

宿泊分野の特定技能人材を紹介するダイブ(東京・新宿)の菅沼基ゼネラルマネジャーは「宿泊分野でも日本での就労を希望する外国人は増える」とみる。「技能試験への対応や長期育成など業界全体としての受け入れ体制整備が急務」とする。

一方で、2号への移行に必要な技能試験や条件などの細則の公表はこれからだ。産業機械を手掛けるIHIは「今後の制度設計を注視したい」とする。

パーソルホールディングス傘下で農業分野向けの特定技能人材事業などを手掛けるパーソルグローバルワークフォース(東京・港)の多田盛弘社長は2号の拡大を評価する一方、資格取得の要件となる技能試験などの行方に注目する。「企業が必要としているのは現場で働く人材。ハードルを厳しくしすぎると人手不足を解消できない」と指摘する。

すでに特定技能2号の対象となっている造船・舶用工業で、外国人を雇用している企業の担当者は「他業界への人材流出は若干懸念するが、長く働いてもらうために処遇を改善するなどの準備を進めていきたい」と話す。企業の受け入れ体制の整備が今後急ピッチで進みそうだ。(日経電子版 参照)

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