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韓国財閥大手SKが半導体メモリー産業の洗礼を受けている。SKハイニックスの2023年1〜3月期は過去最大の営業赤字を計上した。23年通期では1兆円規模の営業赤字が予想されている。振れ幅の大きいメモリー市況が厳冬期を迎えたためで、旧ハイニックス半導体の買収・参入から12年目にして初めての逆風にさらされている。
26日発表のSKハイニックスの1〜3月期業績は散々だった。売上高は前年同期比58%減の5兆881億ウォン(約5100億円)、営業損益は3兆4023億ウォンの赤字(前年同期は2兆8639億ウォンの黒字)だった。過去最悪だった22年10〜12月期の1兆8984億ウォンの赤字記録を大きく上回った。
売上高5兆ウォンに対して3兆ウォンを上回る営業赤字で、証券アナリストは年内いっぱいは赤字が続くとみる。決算発表後の電話会見で同社財務担当者は「顧客在庫が減少に転じ、4〜6月期には業績が反転する。今が底だ」と強調した。それでも売上高の9割超をメモリーで稼ぐ同社の傷は深い。
SKが半導体に参入したのは、ハイニックス半導体を買収した12年。当時は旧エルピーダメモリが経営破綻するなどメモリー産業が苦境に直面していた時期で、SKはハイニックス半導体をわずか3兆4千億ウォンで取得した。
寡占化でプレーヤー数が減少したことに加えてスマートフォンやデータセンター需要増でメモリー市場が急拡大した。メモリー各社が高収益を得た「過去最長の春」(大手幹部)が続いた。SKハイニックスは21年までの10年間で累積純利益56兆ウォンを計上し、SKグループの稼ぎ頭となった。気づけばSKが世界4位の半導体メーカーに浮上した。
ハイニックス買収によって巨額の利益を得たSKの崔泰源(チェ・テウォン)会長はM&A(合併・買収)による拡大策を押し進めていった。20年には米インテルの大連工場を90億ドル(約1兆2千億円)で買収すると発表。韓国企業の過去最大M&Aによって、首位サムスン電子の背中を追う戦略だった。
しかし、順風満帆だったSKの未来は22年下半期に暗転した。
新型コロナウイルスの感染拡大により、在宅勤務や遠隔授業の普及を背景としたパソコンやタブレット端末の特需が消失した。米国の利上げを背景とした景気悪化でスマートフォンの買い替えが進まず、IT(情報技術)大手のデータセンター投資も低迷した。
さらにSKを追い込んだのが米政府の対中半導体規制だ。22年10月に米政府が、一定水準以上の高性能半導体をつくる製造装置について対中輸出を制限すると発表した。中国の半導体メーカーだけでなく、韓国を含む外国籍の半導体工場も対象となる。
SKハイニックスは江蘇省無錫市にDRAM工場を運営している上、インテルから遼寧省大連市のNAND型フラッシュメモリー工場を買収したばかり。米政府の規制は22年10月段階で1年間の猶予を得たものの、中国での継続投資は難しいとの見方が強まっている。
SKハイニックスは既に3兆円規模を中国の工場に投資しており、このまま追加の装置導入ができなければ投資回収の途上での撤退を迫られる可能性もある。
足元でサムスンが市況底入れのためにメモリーの減産を表明するなど市況回復の兆しもある。ただメモリー価格が上昇に転じたとしても米政府の対中規制は簡単には解除されそうにない。巨額赤字をもたらした市況悪化以上に半導体分野での米中対立の先鋭化が、SKを今後も悩ませ続けることになる。(日経電子版 参照)