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トヨタ自動車系でボディー(車体骨格)部品製造のテクノエイト(愛知県瀬戸市)は1948年の設立以来で過去最大の投資に踏み切る。建屋の建設費を含め計100億円弱を投じ、8月以降に大型プレス機を2基導入する。電気自動車(EV)の本格普及も見据え、車体の軽量化に貢献する鋼材の取り扱いや生産能力の増強に備える。
テクノエイトは豊田鉄工(愛知県豊田市)が64%、トヨタが36%を出資している。トヨタは豊田鉄工の株式も4割保有する。同様にボディー部品を手掛ける豊田鉄工は鉄を使った大型部品を得意とするが、テクノエイトは主に中小型の部品や、アルミを材料としたプレス部品を取り扱う。
鉄製ではボンネットやドアの内側の部品を主力とする。アルミ製では排気管の熱をさえぎる「ヒートインシュレーター」に強い。2022年3月期の売上高は225億円で、税引き利益は9億9千万円。売り上げの大半をトヨタグループ向けが占める。鉄製の比率は7割弱、アルミ製の比率は3割強という。
現在は新たな建屋の建設を終え、8月にも稼働するプレス機の設置工事を進めている。2基目は24年8月にも導入する。2基とも加圧能力で既存の1000㌧台のほぼ倍にあたる、3000〜3500㌧級の機械を設置する。これにより薄くて頑丈な「超ハイテン(高張力鋼板)材」を使った部品や、大型部品の生産に参入できる。
テクノエイトの近年の売上高は横ばい基調だったが、2基とも稼働が始まる25年3月期には「300億円を超えてくるだろう」(近藤信介社長)と大幅な成長を見込む。
ボディー部品は軽くするほど、車のエネルギーあたりの走行距離の向上につなげられる。新たに取り扱う超ハイテン材は薄さと強度を兼ね備えるため、トヨタ車の中でもニーズが高まっている。特に電池が重いEVでは他の部品での軽量化がより求められるため、採用の動きが広がりそうだ。
新たなプレス機は車の床と屋根を上下に支えるといった大型の骨格部品にも対応できるようになる。大型も小型も取り扱えれば、トヨタがすすめる周辺部の部品とセットにした受注提案の機会も広げられる。同じ製品を扱う豊田鉄工の生産能力を補完する役割も果たせる。
バイデン米政権は自動車の新しい環境規制を導入する見通しだ。車の二酸化炭素(CO2)排出量を27年から段階的に50%程度削減するといった厳しい基準を設ける。米政府は新規制で32年に新車販売の最大7割がEVになるとみる。
欧州連合(EU)も35年にゼロエミッション車以外の販売を原則として禁じることで合意した。部品メーカーもEVへの対応として、軽量化に貢献する技術を高めることはより重要になっている。
新たなプレス機で鉄の取り扱いを広げる点は、世界的に一段と求められている脱炭素経営の視点からも意義がある。アルミは鉄より軽さがおよそ3分の1という利点もあるものの、素材を生産する場合のCO2の排出量が鉄の3〜4倍ほどあると言われる。また単価も2倍以上高い。
環境負荷を考えると、自動車メーカーはアルミの採用を積極的に広げにくい側面もある。一方、近藤社長はアルミについて「リサイクル技術がさらに進化すれば、電気の使用量を減らし、再び需要が増す可能性もある」ともみる。「鉄もアルミも加工できる当社の強みは変わらずにアピールしていきたい」と話している。(日経電子版 参照)