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厚生労働省が26日発表した人口動態統計(外国人含む速報値)によると、2023年1〜3月の出生数は18万2477人だった。1899年の統計開始以降初めて80万人を割った2022年の同期の19万2211人を5.1%下回った。婚姻数も減っており、出生数を押し下げる要因となる。
国立社会保障・人口問題研究所(社人研)が4月に公表した将来推計人口で、23年の日本人の出生数は最も実現性が高いとした中位推計で76万2000人。専門家からは23年に同推計をも下回るとの声が聞かれ始めた。
日本総合研究所の藤波匠氏は1〜3月のペースが続けば、23年の出生数は70万人台前半になると指摘する。「出生数は婚姻件数に2年半ほど後ずれして顕在化する。新型コロナウイルス禍で20年、21年に結婚が大幅に減り、出生数は下振れする可能性が高い」と話す。
コロナ禍からの経済社会活動の正常化を受け、婚姻数は22年に3年ぶりに増えていた。ただ、23年1〜3月は13万4852件と前年同期比で14.2%減った。コロナ前の19年同期の14万1431件に届かず、ふたたび減少傾向に陥る可能性がある。婚姻数が減れば、出生数の減少につながる。
23年に生まれた人が27歳になる50年の日本の総人口は、社人研の中位推計で1億468万人となる。15〜64歳の生産年齢人口は20年の7508万人から5540万人に減る。婚姻数の減少などで出生数が推計を下回るペースが続いた場合、人口の減少幅はさらに大きくなる。
生産性を高めなければ、現役世代の縮小は経済成長の足かせとなる。65歳以上の人口比率は20年の28.6%から50年には37.1%まで高まる見通しで、年金や医療、介護といった社会保障の持続性も危ぶまれる。
藤波氏は少子化について「30代後半でも出生意欲の高かった団塊ジュニア世代が40歳を超えた16年ごろから、若者が経済的な理由で結婚や出産を望まない傾向が続いている」と分析する。社人研が21年に実施した調査でも、妻が35歳未満の夫婦で理想の数の子をもたない理由として「お金がかかる」が77.8%で最も多かった。
若者の賃金の上昇は力強さを欠く。厚労省が3月に公表した調査で、正規労働者のうち25〜29歳の平均月収は22年に25万5900円。10年前の23万5900円から8.5%増えた。非正規は18万8200円から21万2300円に12.8%増加した。
総務省の家計調査などによると、子ども1人あたりの教育費は同じ期間に月平均2万9416円から3万5295円へと2割ほど増えている。子育ての費用が重くのしかかる。
奨学金返済も重荷になっている。日本学生支援機構の20年度の学生生活調査によると、大学に通う学生の2人に1人が奨学金を受けている。卒業後に数年から十数年かけて返済する場合、結婚や出産の時期の経済的な余裕を奪い、晩婚や晩産につながるケースもある。
政府は異次元の少子化対策を訴え、24年度から3年間、集中的に取り組む方針だ。3月末に公表した強化策のたたき台には児童手当の拡充などを盛り込んだ。
一方で、若者らの結婚や出産を後押しする施策は今のところ乏しい。若年層の不安を払拭し、結婚から出産に踏み出せるような経済環境づくりも欠かせない。(日経電子版 参照)