出生急減、22年80万人割れへ 人口1億人未満早まる恐れ

日本の出生数が急減している。2022年の出生数は初めて80万人を下回る公算が大きい。少子化が進むと年金や医療など現役世代が支える社会保障制度が揺らぐ。労働投入も減り経済の成長力が下がる。子どもを産み育てやすい環境整備が急務だ。

出生数は21年に過去最少の81.1万人となった。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で結婚や妊娠が減った。22年もコロナ禍が続き、出生減に歯止めがかからない。

厚生労働省の人口動態統計によると、過去1年の出生数(日本人のみ)は10月公表の5月時点(21年6月~22年5月)が79万8561人と、遡れる範囲で初めて80万人を割った。

22年1~6月の出生数は36万7232人と前年同期比で5.0%減った。外国人を含む速報値でみても、1~9月の累計は59.9万人と前年同期を4.9%下回った。過去10年の平均減少率は年2.5%ほどで、ペースは2倍に加速している。

妊娠届け出数も低調で今後の急増は望みにくい。22年の出生数は80万人を下回る見込みだ。

国立社会保障・人口問題研究所(社人研)は80万人割れは30年と推計していたが大幅に早まる。人口が1億人を下回る時期も推計の53年から早まる可能性が高い。

1人の女性が生涯に産む子どもの数を示す合計特殊出生率も、第一生命経済研究所の星野卓也氏の試算では22年は1.27と、過去最低だった05年の1.26に迫る。

少子化で働き手が減れば潜在成長率を押し下げる。成長を続けるには生産性を引き上げる必要がある。年金や介護、医療などの社会保障制度は保険料などの負担増が避けられなくなる。

駒沢大の増田幹人准教授によるとコロナ禍で出生率が下がった国のうち、日本や韓国、イタリアなどは低下傾向が続く。米国やフランスなどは回復傾向に入った。増田氏は「少子化対策の状況や、性の違いによる役割分業の意識の強さが影響している」と説明する。

中央大の山田昌弘教授は「30年後に出産適齢期となる女性が減り、少子化が少子化を招く悪循環になる。30年後の出生数は年50万人程度になる可能性もある」とみる。

出生数はコロナの感染拡大が落ち着けばやや回復するとの期待もある。ただ夫婦が希望する子どもの数も減っている。

社人研による21年の出生動向調査で夫婦が理想とする子どもの数は2.25人と、1987年に比べて0.42人減った。結婚の意思がある未婚男女(18~34歳)が希望する子ども数の平均も男性が1.82人、女性は1.79とともに過去40年で最も低い。女性で2人を切ったのは初めてだ。(日経電子版 参照)

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