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ファナックは26日、2024年3月期の連結純利益が前期比20%減の1371億円になる見通しだと発表した。売り上げの約3割を占める中国で、工作機械メーカーの在庫調整が遅れて工場自動化(FA)部門の減速が続く。電気自動車(EV)関連の工場向けに販売が堅調なロボットなどで価格転嫁を進めるなど、収益改善が急務となる。
「在庫増加で工場の稼働率が下がり、売り上げに対して利益の減少幅が大きくなっている」。同日の決算説明会で山口賢治社長は足元の動向をこう説明した。
24年3月期の売上高は4%減の8195億円、営業利益は18%減の1563億円を想定。純利益は市場予想の平均(QUICKコンセンサス、1674億円)を約300億円下回り、4期ぶりの最終減益を見込む。
同日発表した23年3月期決算は売上高が前の期比16%増の8519億円、純利益が10%増の1705億円だった。保守的な減益予想の背景には、工作機械の頭脳となる数値制御(NC)装置などFA部門の減速がある。ファナックは部門別の利益を開示していないが、市場では同部門は相対的に利益率が高いとの指摘がある。
1月に「ゼロコロナ」政策を撤廃した中国では旅行や外食などサービス業は回復しているが、製造業の投資意欲の戻りが鈍い。中国国家統計局によると、製造業の購買担当者景気指数(PMI)は3月に3カ月ぶりに前月から低下。自動車や家電など耐久消費財で戻りが鈍く、加工に使われる工作機械の需要も落ちたままだ。
ファナックの連結全体の受注高は23年1〜3月期に2070億円と直前四半期比で3%増えたものの、FA部門は7%減の353億円にとどまった。受注高は製品によっては半年先の業績の先行指標になるとされる。山口社長は「FAは中国で在庫が減りつつあり、時間はかかるが発注も増え始めている。23年1〜3月期が受注の底になると期待したい」と語った。
スマートフォンのケース製造などに使う金属加工向けのロボドリルを含むロボマシン部門の受注高は340億円と同30%増えた。ロボドリルでIT(情報技術)関連の受注が単発的に入ったものの、「今後の動向は全くわからない」(山口社長)という。
ロボット部門の受注高は2%増の1094億円と過去最高水準で推移する。中国や米国でEV工場向けに需要が伸びている。構造が複雑で部品点数が多いエンジンに比べ、多くのセルを整列させて大型化するEVバッテリーは単純な反復作業が多く、組み立て用としてロボットの導入が広がる。
各国がEVの生産体制の増強を急いでおり、将来的にも需要は底堅い。人手不足による自動化需要も旺盛で、物流や食品などの工場では梱包・搬送用途で生産ラインに協働ロボを導入する動きも広がる。
もっとも、24年3月期の連結全体の売上高営業利益率は19%と、前期から3ポイント以上悪化する。連結売上高に占めるFA部門の割合は前期に29%と、コロナ禍前の19年3月期から4ポイント弱低下。一方、ロボット部門は42%と同7ポイント超上昇した。高利益率のFAからロボットに収益構造が変化するなか、収益性の改善が課題となる。
ファナックの株価は22年末比で13%高と、日経平均株価(9%高)を上回る。JPモルガン証券の佐野友彦・株式調査部共同部長は「ロボットでは原材料上昇分は価格転嫁しているようだが、まだ足りていないのが現状だ。国内生産が多いファナックは輸送費増加分などの値上げまで転嫁できるか見通しにくい」と指摘する。(日経電子版 参照)