ベトナム技能実習生の来日費、採用企業5割超負担へ指針

国際協力機構(JICA)はベトナム政府や国際労働機関(ILO)と連携し、同国から来日する技能実習生の負担軽減を図る。実習生が送り出し機関に支払う費用の半額以上を日本の採用企業が支出する指針をつくる。来日のため多額の借金をする状況には海外から批判があった。採用過程を見直して国際的な人材獲得につなげる。

JICAとベトナム政府、ILOなどが近く、新たな枠組み「ベトナムから日本への移住労働者に関する公正で倫理的なリクルートイニシアティブ(VJ-FERI)」の構築で合意する。来日費用を受け入れ企業が負担することを求める指針を設け、順守する両国企業による人材仲介網をつくる。当面は半額程度の負担も認める。

トヨタ自動車味の素などが参加し、外国人労働者の権利保護に取り組む一般社団法人「JP-MIRAI」が運用する。今秋の実施をめざす。

技能実習に代わり2027年にも始まる新制度「育成就労」は、本人の費用負担が重すぎないことを就労の条件にする。出入国在留管理庁は採用企業に一定割合を負担させる方針。今回の取り組みはこの先取りになる。世界でも珍しいとみられ、JICAはベトナム以外での拡大も検討する。

ベトナム人実習生は母国の人材会社(送り出し機関)から日本企業の紹介を受け、日本語などを学ぶ手数料として平均65万6千円を支払う。平均年収の1.4倍にあたる。多額の借金をする例が多く、セクハラやパワハラに遭っても職場を追われるのを恐れ、声を上げにくい問題があった。

23年末の実習生40万5千人のうち20万3千人はベトナム人が占め、最大の送り出し国だ。今後も日本が人材を引き寄せるには就労環境の改善が急務になる。

新たな枠組みではJP-MIRAIが企業の求人票が指針に合致しているか事前審査する。送り出し機関にはブローカーを使った人材募集を禁止し、日本側が接待などを要求することも禁じる。ブローカーへの謝礼や接待が手数料を上げているとされるためだ。

ILO総会で採択され、日本も批准する国際条約は「労働者から手数料または経費を徴収してはならない」と規定する。しかしアジアの大半の国・地域は不参加。ベトナムなどは手数料徴収を法律で認める。

指針に法的拘束力はなく、守らなくても実習生受け入れなどは可能だ。一方、守れば国際規範に配慮していると示せる。

企業の1人当たり採用コストは数十万円上がるが、労働者の人権を重視する流れを踏まえ「今後はILOなどの国際規範が世界標準になる」との見方は強い。生産性を高めてコスト増を引き受けなければ外国人材を雇用できなくなる。

獲得競争は激化する。今は韓国の非熟練労働者の平均賃金が27万1千円と日本の技能実習生の21万2千円を上回る。台湾の製造業従事者は14万3千円だが右肩上がりだ。

厚生労働省によると、23年10月時点の外国人労働者は約200万人、雇用企業は約32万事業所に上る。JICAなどは日本が年平均1.24%の経済成長を達成するには、40年に674万人の外国人労働者が必要とみている。(日経電子版 参照)

▶人気のサブ割くん【エンジニア海外人材紹介 サブスク型料金システム】

▶海外人材サービスの詳細を知りたい方 ZOOM面談予約

▶海外人材をご紹介

目次