飲食業界、人手不足に「ブーメラン採用」や出張シェフ

新型コロナウイルス感染拡大に伴う行動制限の解除でにぎわいが戻るなか、首都圏の飲食店やホテル、物流といった業種で人手不足が深刻化している。訪日外国人観光客(インバウンド)も欧米を中心に回復傾向にあり、本格的な需要を迎える夏休みを前に企業も知恵を絞り始めた。

「定休日などに元スタッフに手伝いに来てもらっている」と話すのは横浜中華街に店舗を構える老舗中華料理店の揚州飯店(横浜市)。コロナ禍で一時は閑散としていた中華街だが、修学旅行客や近隣企業の宴会需要なども増えてきているという。

なかなか新規の人材を獲得できないなか、取った策が「ブーメラン採用」だ。一度退職し他の店舗で働いている料理人やホールスタッフらに声をかけ、副業として勤務してもらっている。すでにノウハウがあるので即戦力として活躍しているという。

即戦力は、意外なところにも眠っている。料理人による作り置きサービスを手掛けるシェアダイン(東京・港)は飲食店に料理人を派遣する「スポットシェフ」を7月から本格展開する。ホテルやレストランで調理やメニュー開発などの経験を持つ料理人4000人超が登録しており、派遣は1回3時間から。店舗は専門分野や業務内容、繁閑の度合いなどに応じ効率的に人材を確保できる。

「これまでは期待通りの人材を採用できず、頭数は足りているがキッチンが回せなくなることがあった」と話すのは、いち早く利用を始めたジャックポットプランニング(東京・世田谷)統括管理部長の山崎末次氏。スポットシェフはプロフィルを見て採用できるので「即戦力として助かっている」(山崎氏)。

人材を育成しようと無料のスキル講座で人材を集める動きも出てきた。ネット通販の利用拡大などで慢性的な人手不足に悩む物流業界の一助になればと、アルバイト仲介のタイミー(東京・港)と、物流不動産大手プロロジス(東京・千代田)は、フォークリフトの運転免許を取得できる講習を開催する。

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