外国人ドライバー採用に3つの壁 外国免許切り替え厳格化で不透明感

中小の運送会社が、外国人ドライバーの確保で3つの壁に直面している。特定技能制度による受け入れ制度は2024年に整ったものの、その後外国運転免許(外免)の日本免許への切り替え試験が厳格化された。深刻化する人手不足解消の切り札として期待されるが、採用のコストやリスクが上昇し二の足を踏まざるを得ない状況となっている。

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自ら免許を取得

1月中旬の明け方、運送会社のアキタ(名古屋市)の埼玉県久喜市の営業所から大型トラックが出発した。建設資材を静岡県まで運搬する定期便を担当するのは、ネパール国籍のポウデル・アルンさん(32)だ。25年11月に入社し、特定技能の在留資格を取得した。

16年に留学生として来日し、前職は居酒屋のアルバイトだった。「日本でもっといい生活をしたい」と、自ら大型免許を取得し、中途採用に応募した。入社後2カ月間は同僚のドライバーが添乗指導し、26年1月下旬に独り立ちした。アルンさんは「事故を起こさないように細かいところまで指導してくれるので、業務に慣れてきた」と顔をほころばせる。

自ら日本の運転免許を取得し、採用試験を受けたアルンさんはまれなケースだ。「現行のルールで外国からドライバーを採用するのは無理がある」。アキタの原田謙治社長はこぼす。アルンさんに次ぐ外国人ドライバーを雇うため、海外からの採用を選択肢に入れるが、壁の高さを感じている。実際、特定技能ドライバーは24年12月に受け入れが始まったが登録は25年11月時点で106人にとどまる。

「かつては一発」合格率大幅に低下

壁の一つが、来日する外国人が普通免許の取得手段として主に用いる外免切り替え手続きだ。外国人が特定技能ドライバーとして就労するには、日本語能力と技能評価試験の合格のほか、日本の運転免許が必要だ。トラックの場合は入国後半年以内に第1種、タクシー・バスは同1年以内に第2種運転免許を取得し研修まで修了することが条件となる。

国は25年10月に、外免切り替えの運用を厳格化した。切り替えで日本の免許を取得した外国人による事故の続発などが背景にある。イラスト付き計10問の二択だった知識確認は文章問題50問とし、合格ラインを引き上げた。技能では横断歩道や踏切の通過などの場面を課題として加えた。

「従来は、知識確認はほとんどが一発合格だったが、厳格化後は合格まで数回かかる人の方が多い」(外免切り替えを支援するジップラスの藤原呂也取締役)。静岡県警によると県内で25年10月に実施した試験の通過率は知識が36%で、24年通年比57ポイント低下、技能が6%で同11ポイント低下した。

24年12月の特定技能ドライバーの受け入れ開始時点で予測されていた乗務開始までの時間が延びることを意味する。特定技能人材は入国と同時に雇用契約を結ぶ。「免許取得前に任せられる仕事がほとんどないため、一刻も早く免許を取ってもらう必要がある」。ネパール国籍の8人をトラックドライバーとして採用予定のあおい運輸(横浜市)の矢崎克実社長は話す。エージェントへの支払いや住居の手配など受け入れに1人200万円はかかるという。

全国ハイヤー・タクシー連合会は「(ドライバーとして働き始めるまでの)給与や社宅などの費用負担が重すぎる」と指摘する。厳格化により免許取得が遅くなるだけでなく、期間内に取れなければ帰国となって採用費や育成費がムダになるリスクもある。加えて運送業が該当する特定技能1号は原則5年間の在留にとどまるという壁もある。「10年、20年勤める人を迎えるなら採算が見えるが、5年で投資を全て回収するのは不可能」。アキタの原田社長はもらす。

少しでも早く免許を取れるようにするため、警察庁は25年3月、特定技能ドライバーとして働くために入国した外国人の申請を優先的に受理することなどを都道府県警察に指示した。とはいえ「待ち時間が読めない」という中小運送会社の声は多い。

外国人の雇用にはもともと日本語の壁もある。利用者への説明や緊急時の対応のため、タクシーとバスのドライバーは日本語能力試験で上から3番目の「N3」の合格が求められている。「日本語がネックとなって日本で働きたい人材を集めることに苦戦している」。ベトナムなどで採用活動を始めたタクシー会社、大和自動車交通の川村哲也経営管理部長は話す。現地での長時間労働で強盗などの危険な目にあいやすいというイメージも影響しているとみられる。日本バス協会は、日本語能力要件について4番目の「N4」へ変更することを要望。国は日本語の要件で見直しの検討を始めた。

<Review 記者から> 受け入れ企業の体制変革も必要

規制強化と少子化による人手不足が深刻な運送業界で、外国人材の活用は現実的な解だ。出身国によってはハンドルの位置や運転時の慣習は日本と異なる。ドライバーが事故を起こさないよう管理する受け入れ企業の責任は大きい。

アキタは特定技能ドライバーが独り立ちしたあとも、定期ルートのみを任せている。運送時の現場対応や積み荷の扱い方などを日本語で理解し対応する必要があるためだ。原田社長は「日本で運転経験があっても、相当しっかり教育しないと事故や違反は起きる。外国人ドライバーが悲惨な大事故を起こせば、特定技能で労働力を補う動きにブレーキがかかる可能性がある」と指摘する。

サカイ引越センターは2025年9月以降、インドネシアから30人を採用し、繁忙期の26年3〜4月までにドライバーとして働き始められるようにする計画だ。引っ越し現場で日本語が求められる接客は他のスタッフが担えるチーム構成にする予定だ。総務部の木下和洋課長は「運転だけでなく、引っ越し技術とお客様への対応力を備えた人材をドライバーと呼んでいたが、外国人材の受け入れを前に考え方を改めた」と話す。

外国人ドライバーの受け入れを契機に職場環境を整えることは、女性や未経験者を含む多様な人材が就労できる土壌づくりにもつながる。深刻な人手不足を乗り越えるには、自動運転などの技術革新と多様な働き手を受け入れる仕組みづくりの双方が欠かせない。

(日経電子版 参照)

  

 





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