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外国人技能実習制度に代わって2027年にも創設される「育成就労」の詳細な制度案が23日分かった。外国人が来日前に母国の人材会社に支払う手数料などは日本での月給の2カ月分までとする。これまでは上限がなく、平均52万円を負担していた。働き手の負担を軽減して来日しやすくし、人手不足の緩和につなげる。
出入国在留管理庁と厚生労働省が案をまとめた。有識者懇談会に諮った上で夏までに省令にすることをめざす。
技能実習は、日本側から求人を受けた各国の人材会社(送り出し機関)が実習希望者を集め、企業の面接を受けさせる。
日本も批准する民間職業仲介事業所条約は「労働者から手数料または経費を徴収してはならない」と規定するが、アジアの大半の国は同条約に参加していない。送り出し機関が実習生から手数料などとして数十万円を徴収するのが一般的だ。
育成就労に移行すると本人が上限を超えて送り出し機関に支払った場合、受け入れ企業が超過分を肩代わりしなければ雇用できなくなる。
23年の賃金構造基本統計によると、実習生の月給は平均21万7千円で、2カ月分は43万4千円。仮にこれが上限になるとすれば、送り出し機関への平均支払い額との差である8万7千円が新制度では企業負担になる。
コスト増を避けて本人負担額の低い国や送り出し機関を選ぶ企業が増える見通しだ。
製造、建設、農漁業などで人手不足が深刻化し、外国人労働者は23年10月末時点で205万人と10年で2.8倍となった。韓国などとの争奪が激しくなるなか、働き手の確保には受け入れ環境整備が急務だ。
育成就労の創設は24年6月の出入国管理法などの改正で決まった。外国人が送り出し機関に支払った費用が「適正」であることを就労の条件とした。入管庁などが具体的な基準を検討していた。
国によって費用の名目や額が異なり、入管庁などは日本側が妥当な徴収額を定めるのは困難と判断。来日後に返済できる水準を上限にすることにした。月給2カ月分の借金なら、月給の約1割を返せば1年半程度で完済できるとの想定だ。
入管庁の実態調査で、実習生の85%は送り出し機関に何らかの費用を払っていた。平均52万1千円で、最多のベトナムは65万6千円と同国の平均月収の十数倍に及んでいた。
支払いのため多額の借金をする例が多い。来日後に勤務先で賃金の不払いやハラスメントに遭っても我慢を強いられがちだ。失踪して不法就労で稼ごうとする実習生もいる。23年の失踪者は9700人に達した。
手数料負担の解消は各国共通の課題だ。
韓国の外国人受け入れ策である「雇用許可制」は政府が労働者の選抜や研修などに直接関与し、民間仲介事業者を排除する。しかし、三菱UFJリサーチ&コンサルティングによると、実際は仲介業者などに非公式のあっせん手数料を支払い、100万円前後の借金をする例もある。
言葉の壁が外国人材と企業のトラブルにつながる例も多い。育成就労では日本語の学習機会を拡充する。
就労開始前の日本語講習について、国が認定した日本語学校だけでなく国家資格「登録日本語教員」を取得した教師による講習も認める。講習は100時間以上とする。これとは別に、日本での3年間の就労期間中に100時間以上の日本語教育を企業側の負担で実施するよう求める。
地方企業に対しては外国人の受け入れ枠を大都市圏より拡大する方向だ。都市部の一般企業の3倍を想定する。転職者の受け入れは育成体制や法令順守などの基準を満たす企業に限定し、在籍する外国人の3分の1までとする。都市部の企業が地方から迎え入れる場合はさらに制限し、6分の1までとする。
転職が原則禁止の技能実習は3年間、外国人材をつなぎ留められた。育成就労は1〜2年で自らの意思による転職が可能。地方企業の間では賃金水準の高い都市部に外国人材が流出してしまうとの懸念がある。
(日経電子版 参照)