出生率最低、見えぬ少子化反転 若者の不安払拭が急務

2022年の合計特殊出生率が過去最低となり、日本の少子化は想定を超えるスピードで進む。23年に入っても出生数の減少は続いており反転の兆しはみえない。若年層の将来不安を解消し、出産や子育てをしやすい環境をどうつくり出すか。政府と企業が一体となって働き方改革の実効性を上げていく必要がある。

「若年人口が急激に減少する30年代に入るまでが少子化トレンドを反転することができるラストチャンスだ」。岸田文雄首相は1日のこども未来戦略会議で、働き方をはじめとする社会全体の仕組みを改める必要性を強調した。

今回公表した22年の出生率は概数だ。小数点以下の詳細な数字をみると1.2565で、過去最低だった05年の1.2601を超える低さになった。9月に公表予定の確定値でも1.2601を下回れば、17年ぶりに過去最低を更新する。

年間出生数が200万人を超え「第2次ベビーブーム」と言われた1970年代前半生まれの団塊ジュニア世代の子どもが、30年ごろにかけて出産適齢期を迎える。

出生数がまだ100万人を超えていた00年代生まれが30代の間に出生減に歯止めをかけなければ、日本は出生率を反転させるきっかけを失う。

少子高齢化と人口減のスパイラルも増幅しかねない。首相が「ラストチャンス」という危機感もここにある。

足元では少子高齢化に伴う人手不足で大卒者の就職環境は改善している。保育所の整備や育休給付の充実など少子化対策も進む。それでも少子化が止まらないのは日本経済や家計の将来不安が増しているためだ。

国立社会保障・人口問題研究所の21年調査では未婚者の平均希望子ども数は男性で1.82人、女性も1.79人とともに過去最低となり、夫婦の理想子ども数も2.25人と過去最低だった。

社会保障費も増え、子どもを産み育てるのは「ぜいたく」になったとの声もある。

家計維持のためにも働く女性が増え、共働き世帯は専業主婦世帯の2倍超になった。男女ともに仕事と育児を両立する環境を求める一方で、残業のない働き方や柔軟に休暇を取れる制度など働き方改革は後手に回ってきた。

大正大の小峰隆夫客員教授は「本当の病気は古い雇用慣行などにあり、少子化は副作用だ」と指摘する。「長時間労働や転勤制度といった雇用慣行や男女の役割分担意識を変えなければ少子化は止まらない」と警鐘を鳴らす。

第2次ベビーブームに生まれた団塊ジュニア世代は出産適齢期を超えた。期待された第3次ベビーブームは訪れず、15〜49歳の女性はこの20年で500万人ほど減った。

この世代は大学卒業前後にバブルが崩壊し、高い失業率の下で就職氷河期に直面した。希望する職に就けなかった人も多い。

「失われた30年」の下で苦しんだ世代への社会的な支援は十分だったのか。05年の出生率が過去最低だったのは、経済情勢が出産適齢期にあった世代の人生プランに影響を与えた結果といえる。

政治の動きも鈍かった。団塊ジュニア世代が20代後半から30代にさしかかった00年代、当時の小泉純一郎政権は強固な政治基盤を主に郵政民営化などに費やした。企業もバブル崩壊からの立て直しにまだ躍起で、若手社員の働き方への関心は薄かった。

政府は03年に少子化社会対策基本法を施行するなど断片的に少子化抑制を試みたものの、育児支援が中心だった。

賃上げなども若年層の将来不安を解消するには不十分で、社会保障負担の増大や予算の高齢者偏重は是正されなかった。こうした失敗を繰り返している余地はもはや日本にはない。

政府は1日にまとめた「こども未来戦略方針」で「若者・子育て世代の所得を伸ばさない限り、少子化を反転させることはできない」と明記した。育児世帯への給付だけでなく、男性の育休取得促進や賃上げ強化も盛り込んだ。

首相は子ども・子育て政策が「最も有効な未来への投資」と明言する。政策の財源のあり方を含め、政府だけでなく企業も一体で次世代を育成する発想への転換が求められている。(日経電子版 参照)

海外人材をご紹介

目次