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総務省が12日に公表した2022年10月1日時点の人口推計で、日本の働き手の中心となる生産年齢人口は前年同期比で29万6000人減(0.4%減)の7420万8000人だった。減少に歯止めが掛からないなか、外国人の入国者から出国者を引いた社会増減は2年ぶりの増加に転じた。労働力の減少を補うには力不足で、働きやすい環境づくりが課題となる。
15〜64歳の生産年齢人口の減少は12年連続となった。総人口に占める割合は59.39%で前年同期より0.03㌽とわずかに改善したが、経済を支える中核となる年齢層が不足している窮状は変わらない。
外国人を除いた働き手は7173万人で47万2000人減った。総務省の労働力調査によると、15歳以上のうち労働市場に参加している労働力人口の22年平均は6902万人と、前年比で5万人減少した。この10年ほどで女性や高齢者の労働参加により増加傾向にあったが限界がみえてきた。
日本にとって外国人の受け入れを拡大し、労働市場を支えてもらうことは避けて通れないテーマだ。
人口推計では外国人の全体人口は前年比19万4000人増の291万6000人で、比較可能な1950年以降で過去最多となった。22年10月以降に新型コロナウイルスに伴う入国制限の緩和が進んだことから、23年も増加が期待される。
厚生労働省がまとめた22年10月末時点の外国人労働者数でも182万2000人で過去最多を更新。増加率は5.5%と前年同期比で5.3㌽改善した。
外国人労働者の受け入れのあり方を巡り、政府の有識者会議は10日、技能実習制度の廃止を求める提言の試案を示した。外国人材の活用に向けて政策も転換点を迎えている。
課題の一つが待遇改善だ。労働力が不足すれば本来は賃上げにつながるが、現実は異なる。
スイスの国際経営開発研究所(IMD)が公表した「世界人材競争力ランキング2022」によると、高度外国人材にとって魅力のある国で日本は63カ国・地域中54位にとどまった。日本は成長力の低迷が続き、世界に比べて賃金も上がっていない。勤続年数が長くなるほど賃金や職位が上がる年功序列型など労働慣習の問題も指摘される。
東京都立大の宮本弘曉教授は「外国人材をひきつけるには、成果主義的な賃金制度にするなど労働環境を変えないといけない」と強調する。日本人を含めて人材が移動しやすい仕組みを整えれば、外国人労働者も働きやすくなると訴える。
子育て中の女性や高齢者を念頭にした時短勤務や在宅勤務などの環境整備も欠かせない。急速に進む人口減を背景に、政府は少子化対策の拡充を急ぐ。学習院大の鈴木亘教授は「母親が仕事を辞めることなく、働きながら子育てできる環境づくりに向けた政策を進めるべきだ」と説く。
長寿になり働く期間が長くなれば、リスキリングによって労働者個人が新たな技術を身につける必要性も高まる。デジタル化で生産性を底上げし、労働力不足を補う発想が不可欠となる。(日経新聞参照)