外国人「特定技能2号」の分野拡大 家族帯同・永住に道

外国人が人手不足の業種で働く「特定技能」で、長期就労できる対象分野が6月にも拡大される見通しとなった。背景には、期間限定の受け入れでは労働力確保が難しくなるとの強い危機感がある。スキルを高められ、家族も帯同できる。将来は永住権取得も可能。そうした選択肢を示せなければ、海外人材に背を向けられかねない。

「日本で働き、技能を磨いた人を帰国させていいのか」。出入国在留管理庁の幹部はこう話す。現状のままでは、特定技能で働く人の多くが期限を迎えたら去らざるをえない状況だった。

海外人材をめぐる日本の政策は2つの顔を持ってきた。経済の活性化などをもたらすとの期待から、大卒の専門職・技術職ら高度人材の受け入れにはかねて積極的だった。「技術・人文知識・国際業務」などの在留資格は何度も更新でき、家族も帯同できる。

一方、専門性や技術力がそれほど高くない非熟練労働者については「雇用を奪われる」といった懸念から慎重だった。深刻化する人手不足に対しては、「人材育成を通じた国際貢献」を建前とする技能実習生の受け入れなどで対応してきた。

潮目が変わったのが2019年、特定技能制度の創設だった。正面から人手不足対策を目的とし、建設など2分野では長期就労にも道を開いた。

さらに技能実習について、22年1月に古川禎久法相(当時)が「本音と建前のいびつな使い分けがあるとの意見・指摘に正面から向き合わなければならない」と表明。技能実習は廃止し、業種を特定技能とそろえた新制度を創設する方向となった。非熟練労働者がスキルアップしながら長く働ける環境を整える動きが本格化した。

対象拡大を検討しているのは特定技能「2号」。在留が最長5年の「1号」と違い、更新回数に上限がない。家族も帯同でき、将来は永住権も取得できる。これまで建設など2分野に限っていたが、飲食料品製造業のほか、産業機械などの製造業、農業など9分野の追加が検討される。

かねて経済界からの要望も強かった。経団連は「幹部登用も見据えた中長期的視点から人材育成ができる」と22年2月に提言。日本商工会議所も同様の要望をしていた。

特定技能は技能実習からの移行が多い。経験の乏しい人材が実習生として来日し、技能を身につけて特定技能1号へ。さらに2号を取得して日本で継続雇用――。対象が拡大されれば、こうした流れが強まる。

企業の中核を担う人材の供給源にもなりうる。

「彼らが帰国してしまったら、うちはやっていけない」。建設会社、コンクリートポンプ(岐阜県各務原市)の加納岳人副社長は話す。同社で技能実習生の頃から働く中国出身の3人が22年に特定技能2号を取得。現場の中心となって働いている。

19年の創設直後から1号で働く外国人は24年5月以降に在留期限を迎える。見直すなら設計を急ぐ必要がある。「今秋には(2号取得に向けた)試験を実施しないと間に合わない」(入管庁幹部)

試験の具体化が焦点となる。国が実施する技能検定で上級の水準が条件となるが、入管庁によると、既に技能検定があるのはビルクリーニングなど2分野のみ。その他7分野では早急に試験内容や合格水準を固めなければならない。

建設では2号の取得で技能検定1級レベルを要件としている。日本人を含めても1級の合格率は3割ほど。2月末時点で2号取得者は10人にとどまる。分野を追加しても、取得者がどれほど増えるかは見通せない面もある。

少子化で労働力不足に直面するのは日本だけではない。韓国の出生率は0.78と世界で最低水準。中国は「一人っ子政策」を転換したものの人口減が見込まれる。東南アジアなどの若者を巡る綱引きはますます激しくなる。経済成長に不可欠な労働力をどう維持・拡大するのか。日本の出生数は80万人を割り込み、人口減は進む。判断に待ったなしだ。

(外国人共生エディター 覧具雄人)

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